S君は急に怯えた顔をやめて 「店長さん! 鞄を!」と叫んだ。店長さんは頷くと大男が離した鞄を取り上げた。

S君は急に怯えた顔をやめて 「店長さん! 鞄を!」と叫んだ。店長さんは頷くと大男が離した鞄を取り上げた。

高校生の頃、仲良くて一緒に帰ることの多かったSくん。

身長が155なのをコンプレックスにしていたけど、性格は優しくてお人好し。

人のために自分のデメリットを気にしない奴だった。

ちょっとシャイで、クラスのアイドルの女の子から「Sくん可愛い~」と頭を撫でられて、顔を真っ赤ししてるようなお人好しを絵にかいたようなタイプだった。

ある日学校の帰りに、二人で書店に行った。

Sくんは推理小説を買っていた。

俺がエロ本を立ち読みしていると、「ねえ、今見た?」とS君が囁いてきた。

「何を?」と顔をあげると、S君が顎で何かを指している。

そちらを見ると、近所の馬鹿高校の制服を着た、身長180推定体重100キロの大男がいた。

「あの人がどうかした?」と訊くと

「万引きだよ、今コミックを何冊か鞄にいれてた」と小さな声で返してきた。

「え? マジか、どうする? テレビでみたけど万引きって商品持って外に出て始めて成立なんだろ?」と言い返すと、

「うん、だけど怪しいし、お店の人にこっそりと言わないと」とS君いいかけている時に、その大男は足早に外に出ようとした。

「あ」と思った次の瞬間、S君が大男のあとを追っていた。

俺も急いで店を出て、S君に追い付くと二人は睨みあっていた。

「今、あなたコミックを万引きしましたよね? 僕きちんと見ましたから」とS君。

「はあ? 盗ってねえよ。ふざけんな、ぶち殺すぞ」と大男。

S君は俺に向かって「お店の人呼んできてくれ」と小声で指示した。

S君が大男に何されるかわからないので、俺は急いで店長さんに助けを求めた。

店長さんを連れてS君のもとへ行くと、S君は大男に片手で胸ぐらを捕まれていた。

S君は怯えた顔をしていた。

店長さんが「失礼ですが、あなたがうちから書籍を盗むところを見たとのことですが」と声をかける。

大男は「ああ? ふざけんな、証拠もなしに疑うんじゃねえ」と大声を張り上げた。

「では手に持っているその鞄の中身をみせて下さい」と店長さん。

大男は「ふざけんな! プライバシーの侵害だ」と返す。

S君の胸ぐらを掴んだ手と反対の手に持った鞄を決して離そうとしなかった。

S君が「見た! あなたは万引きをした!」とひるみながらも返す。

すると大男は「てめえぶち殺すぞ」と脅しかける。

するとS君は完全に怯えた様子で

「うう……すみません、逃がしてくださいイイイ 」と泣き顔を作った。

大男はニヤリと笑うと「ああ? 逃がさねえよ」とS君を両腕で羽交い締めにした。

するとS君は急に怯えた顔をやめて

「店長さん! 鞄を!」と叫んだ。

店長さんは頷くと大男が離した鞄を取り上げた。

中身を確認すると確かに未開封の同じ巻数のコミックが数点出てきた。

大男の顔つきに焦りが出ていた。

店長さんに「お話を伺いましょう、警察も呼びます」と言うと、大男は顔面蒼白になった。

店の奥で警察を待っているときに、大男が

「ふざけんなよてめえ、俺の仲間と仕返ししてやるからな、俺のグループの力を知らずにこんなことしやがって」と脅されてもS君は肩をすくめて

「あなたがどこの誰だろうと関係ない。法律は誰にも平等です。きちんと罪を償ってください」といってのけた。

男が男に惚れたよ。

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