「空手やってるとはいえ、下級生にKOされたなんて話が広まったら恥ずかしいからやめてくれ」

「空手やってるとはいえ、下級生にKOされたなんて話が広まったら恥ずかしいからやめてくれ」

3年前の春に中学1年生になった弟は剣道部に入部した。

その中学の剣道場は生徒達の部活動が終わると、弟が小3から通っている空手道場を間借りして、練習に使っている場所だった。

そして入部して1ヶ月も経たない内に、学校から親に電話が入った。

聞けば、弟が剣道部の2年生の先輩の顔面を蹴飛ばしてKOしてしまったとのこと。

真っ青になった母親はすぐさま学校に飛んでいって話を聞いた。

弟が下克上に及んだ理由はごく簡単なものだった。

「あの先輩は普段自分達も空手で使っている道場に土足で上がりこんで来た。許せない。」

その先輩はちょっとどころでは済まない不良男子生徒で、普段から近所の家にエアガンを撃ち込んだり、「借りた」といって自転車を盗むような悪たれだった。

あまり口数の多くない弟が目を付けられ、からかわれるようになったのは想像に易い。

「からかわれるのは我慢できる。でもあいつは、自分も剣道をやってる癖に道場に土足で入ってきた。どうしても我慢できなかった。」

それが弟の言い分だった。

そして剣道部の顧問の先生からは

「仮にも空手をやってる人間が、自分から暴力を振るってはいけない」

と、簡単に注意を受けただけで済んだらしい。

先生の方も悪たれに手を焼いていたのがその原因の一つだろう。

後で聞いた話では、悪たれの親が一度我が家に怒鳴り込んでこようとしたらしい。

が、他ならぬ悪たれ自身が

「空手やってるとはいえ、下級生にKOされたなんて話が広まったら恥ずかしいからやめてくれ」

と言ったらしく、結局家の方にも特に何も起きなかった。

その後、弟はこの一件もあって剣道部を退部した。

空手道場の先生にも事情を話し

「責任を取りたいので辞めさせて欲しい」

と申し出たが、師範に

「俺に負い目を感じてるならもっと練習して、早く段を取れ。そして道場の指導を手伝え。」

と言われたそうで、その一年後に初段を取得した。

今では師範に言われた通り、自分の練習をしながら後輩達の指導をやっているんだから辞めて良かったかな。

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