生まれついての学会員だった俺。結婚することになり、相手の両親に挨拶に行こうとしたのだが・・・

生まれついての学会員だった俺。結婚することになり、相手の両親に挨拶に行こうとしたのだが・・・
両親が某学会員で、生まれついての学会員だった俺。

信仰心は皆無だ。気づいたら学会員だったというだけ。

既存の宗教ではないものを「自分達で選んだ」という自負のある両親とは、ものすごいギャップを抱えていた。

まあでも、両親の前ではそれなりに装って、波風立てずにやってきた。

そして大学で彼女と出会って、交際し、そろそろ結婚を考えて、それぞれの親に挨拶をしようという話になった。

その後、妙に元気がなくなる彼女。

相手の親(特にコワモテだと聞いていた彼女のお父さん)に挨拶することを考えると、胃が痛くなりそうだったから、彼女もそうなんだろうと思っていた。

彼女の実家の住所にたどり着いた俺は驚いた。

そこはお寺だったんだ。

しかも学会で「捨閉擱抛」と嫌いまくってる宗派の。

やや離れたところに車を停め、携帯で彼女を呼び出すと「学会のうちやって聞いてたから、言われへんかってん…」

泣きじゃくる彼女。

俺自身は、学会には生まれついて所属していただけで、何の感慨もなかったけど、彼女にとっては途轍もない重大な問題だったんだと気づいた。

当然その日は挨拶どころではなく、いったん帰って、先に俺のとこの両親から済ませよう…ということになった。

このとき、俺は学会を抜ける決意を固めていたのだが、両親も話せばわかってくれると思って、バカ正直に「寺の娘と結婚したいから、脱会したい」という話をしてしまった。

怒った顔をほとんど見せたことのない父親が、まるで般若のような顔をして、彼女を罵倒した。

鬼に変わった母親が彼女の頬を平手で殴り、箒で背中を叩いて追い出した。

どうにも出来なかった。

気まずい数日を実家で過ごし、諦めたと装って下宿に戻った。装うのは慣れてる。

俺はそれから、卒論のゼミをブッチしまくりつつ、ひたすらバイトに明け暮れた。

とにかく、卒業までに両親が知らないところに逃げるつもりだった。

数ヶ月後、「このままでは卒論の提出が出来ないから、指導教授のとこに顔出せ」という名指し掲示が貼り出される頃、やっとある程度まとまった金が出来た。

俺は両親に「大学行かせて貰ったお礼」と称して、やっすい温泉旅行をプレゼントした。

卒論も順調なものと思っている両親は、涙目になって喜んで出かけていった。

無人の実家の前に、こっそり購入した中古の軽をつけると、トランク一つに詰め込めるだけ詰め込んで放り込み、仏壇と金属バットを積んで逃げ出した。

下道を百五十キロくらい走って、どこかよく知らない浜辺に、SGI仏壇を置いて、バットでぶん殴った。電動式で扉が開く、黒光りするこの仏壇は、随分と丈夫にできているらしい。

まるでうちの両親の信仰心のようだ。

カドに当たった金属バットがひん曲がってしまった。

それでも、もう一発お見舞いしたら、中からありがたいありがたい紙製ご本尊が飛び出して来た。

俺はバカ笑いしながらライターで火をつけた。

そのとき、色々なものが過ぎったが、スッキリした。

あれから、もう十年近くになる。

彼女との間に生まれた娘が、五歳になる。

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