騒ぎの渦中の男女の間にぬるりと、酔拳でもやってるのか？と言う様な足取りで入り込み

かなり前、友人数人と暢気に居酒屋で、馬鹿な話をしながら飲んだくれていた。
したらば、すこし遠くで食器が落ちる音と、男の怒号が聞こえてきた。
男が女に怒鳴り散らしている。どうやら、痴話喧嘩…？と言うよりは、男が一方的に悪いっぽい。

男は今にも女に殴りかかりそう。
自分は正直へたれてしまって、生暖かく観察体勢に移っていたが、最も酔っていた友人Ａが、ゆらりと立ち上がった。
正直、Ａに対していやな予感がした。よもや、此処を更に掻き混ぜるんじゃ無いか？と。

予想は的中した。

Ａは、騒ぎの渦中の男女の間にぬるりと、酔拳でもやってるのか？と言う様な足取りで入り込み、
「はぁい！ぶれいく～！！双方、コーナーポストへどーぞ！！」と、完全に酔客な調子の大声で言った。

その隙に女性は、男から少し離れた場所へ退避したのだが男はＡに掴みかかった。
此処で、自分はああヤバイ。と思ってＡを止めに行こうと思ったのだが、一緒に観察してたＢが自分を止めた。
「見ててみ？あいつ、アソコまで酔うと、ブルースリーが宿るから。」ニヤニヤしながらＢが言う。
いや、アカンだろ。騒ぎ大きくなるだろ。Ａを止めようよＢ。そう言っても、Ｂは、「問題ない。」

…駄目だ、コイツも素敵に酔っ払っている。そんなやり取りをしていると、Ａが顔を殴られたらしい。
Ａがもんどり打って倒れていた。周囲の人がＡに駆け寄っていた。

皆が自分と同じ調子だったと思う。男も然り。Ａは尚もまくし立てる。
男は、Ａのただならぬ調子に、「こ…このキ○ガイが！！」とか何とかわめき散らして、店を出て行った。

Ａは完全に逝ってるらしく、その後数分、「いーち、にーぃ、さーんダー！！」やら、「ポォゥ！！」
だの意味不明なパフォーマンスを繰り返していたが、女から礼を聞いてる最中、酔いが廻ったらしく、トイレの住人に…

個人的な感想を言わせて貰えば、Ｂよ、Ａのアレはむしろジャッキーチェンだ。あの格好悪さは。

因みに、助けた女性とＡとの間には、一切何の関係も発生しませんでした。