中学生くらいでこんな経験したら、絶対あんたに惚れてしまうなあ。

うちのクラスカラーは青で、幕の色も青かった
最初はただ白い文字で「３組　優勝」と書くだけの
地味な構想だったが、女子の一人が誤って
黄色いインクをこぼしてしまった

青地に黄色って、ものすごく目立つし
その時点でこぼした女子は泣いてしまった

でも俺はそのこぼれた黄色を見て
「別に大した事じゃない、こぼれた部分を
塗り潰すように、カミナリでも落とす絵を入れたら
いいんじゃない？」と提案してみた

その案は採用されて、結果なかなか迫力ある幕が完成した
女子のミスも、いつの間にかうやむやになっていた

それで体育祭当日、一番うまく作った応援幕に与えられる
賞のようなものがあったんだが
それにうちのクラスの幕が選ばれた

みんなが喜んでる中、俺だけは
ちょっぴり違う嬉しさを感じてたと思う

翌年、そのインクをこぼした女子が転校する事になって
クラス全員に別れの挨拶をした

別に俺はその子と仲良かったわけでもないし
あまり話した事もなかったが
なぜか放課後、その子が俺にも挨拶しに来た

俺が社交辞令的に「元気でな」と言うと
いきなり「○○（俺）って優しいよね」とか言った

同じクラスだけど、その子とはほとんど接点なかったので
「はぁ？そうか？」と返すと
「うん、ありがとう」と言われた

お礼を言われる心当たりが無かったので
「なにが？」と聞き返すと
「ううん、なんでもない」と返された

その時は完全に「？？？」という感じだったけど
今思い返すと、それは応援幕を作った時のミスを
俺が間接的にかばう形になった事を
言ってたのかも知れない